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社会保険労務士と税理士の業務境界のあり方について 後編


2,覚書をみていくと・・・


 
さて今回は今度6月6日に全国社会保険労務士会連合会と日本税理士会連合会との間で調印予定の全文(全国社会保険労務士会連合会ホームページから引用)を紹介した上で、社会保険労務士としての私見を述べることにします。 


 (税理士又は税理士法人が行う付随業務の範囲に関する確認書)

 全国社会保険労務士会連合会及び日本税理士会連合会は、社会保険労務士法第27条ただし書及び同法施行令第2条第2号に基づく付随業務の範囲に関する協議において、下記のとおり意見の一致をみたのでここに確認する。

                記

 1 税理士又は税理士法人が社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務を行うことができるのは、税理士法第2条第 1項に規定する業務に付随して行う場合であること。

 2 (1)上記1にいう税理士又は税理士法人が付随業務として行うことができる社会保険労務士法第2条第1項第1号から第2号までに掲げる事務は、「租税債務の確定に必要な事務」の範囲内のものであること。
   (2)社会保険労務士法第2条第1項第1号の2の業務(提出代行)及び同項第1号の3の業務(事務代理)は、付随業務ではないこと。

 3 付随業務に関して疑義が生じた場合は、その都度、全国社会保険労務士会連合会と日本税理士会連合会との間で協議の上、解決を図ることとする。
 なお、年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が当該業務を行うことは税理士法第52条(税理士業務の制限)に違反する。

 以 上



 ここでの問題点は、2であげられている付随業務として税理士及び税理士法人ができるのは『租税債務の確定に必要な事務の範囲』とされている点である。この解釈については税理士関係者は、顧問先と税務書類の作成を含む包括的契約を締結していれば、給与計算の確定に必要な労働保険年度更新 社会保険算定基礎届社会保険・雇用保険資格取得届の業務が出来るなどとしている点である。ここでオチがあるのは単なる記帳業務の契約ではこれらはできないとしているわけだ。


 私はこれに大いに憤激しているところであり、租税債務の確定に必要な行為は税理士だけでは事務が完結できない点を指摘したい。なるほど給料計算からして社会保険料及び労働保険料は料率表を確認したら計算は出来ようが、それは厚生労働省所管の出先行政機関(税務官公署ではない)に種類の提出をして各厚生労働省所管の出先行政機関の決定通知書を事業主が受け取った時点でそれら保険料等が初めて正式に決定できるのである。税理士のこれら業務の関与は解釈上必要最小限度というものであり、何でもありとする税理士関係者の拡大解釈は誤っているといえる。

 さらに進めていくと租税債務の確定のための計算事務は可能かもしれないが、労働社会保険諸法例に基づく提出書類の作成は租税債務の確定に関係ないし、また例えば社会保険資格取得届の提出書類作成や被扶養者届等の提出書類の作成および関係する相談は、はたして租税債務の確定に必要な業務だろうか? 社会保険上の被扶養者になるかどうかの相談業務はみるからして租税業務の確定には関係ないのである。そして2(2)にもあるように厚生労働省所管の出先行政機関への労働社会保険諸法例に関する書類の提出代行、またこれら申請書類等の行政機関の調査に対する立会 行政機関に対する主張等の事務代理は税理士は出来ないこととして明らかに確認されたのである。

 以上のように税理士は決して社会保険労務士の代わりにはならないので、一部の不心得な税理士による誤った誘いにはのらないようにしてほしい。事実過去の体験談から、ある四国税理士会所属の税理士はある零細企業に対して労災保険なんぞ加入しなくてもよくて、民間の損害保険(この税理士は損害保険の代理店をしている)に入ればそれでいいと言ったような事業主・ここの労働者に不利な労働状態におとしめていたのである。これはもってのほかである。


 少々脱線するが例年香川労働局から香川県社会保険労務士会に労働保険年度更新協力要請がやってきて、所属の社会保険労務士が分担して協力している。私も元高松労働基準監督署で労働保険相談員をしていた経験から今年も協力したが、今年も四国税理士会所属の税理士事務所及び会計事務所の職員が社会保険労務士法第2条第1項1号の2違反行為(提出代行)をしているのを複数発見している。当然来年からは覚書違反にもあたるので公に摘発(無資格者の社会保険労務士業の行為)及び警告指導が出来るわけである


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