業務中や通勤時の負傷等は労災保険を!
さて今更と・・・思われるかもしれませんが、業務中や通勤途上の負傷等は労災保険を使用し、業務中負傷等で4日以上休業の場合には労働者死傷病報告を管轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。様々な理由をつけて業務中の負傷なのに労災保険の申請をしない、又は虚偽の報告やで労災申請や各種報告をするのは、労災隠しとして労働基準監督署から労働安全衛生法違反となり処罰されます。また業務中や通勤時の負傷等において健康保険を使えば、詐欺罪の適用されることもあります。労災隠しをキーワードに話題をすすめていくことにします。
労災隠しについて
労災かくしとは、「故意に労働者死傷病報告を提出しないこと」又は「虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署長に提出すること」をいい、このような労災かくしは適正な労災保険給付に悪影響を与えるばかりでなく、労働災害の被災者に犠牲を強いて自己の利益を優先する行為で、労働安全衛生法第100条に違反し又は同法第120条第5号に該当することとなります。
このような労災かくしに対して厚生労働省は、罰則を適用して厳しく処罰を求めるなど、厳正に対処することとしています。
《参考》
労働安全衛生法 第100条第1項
厚生労働大臣、都道府県労働局長又は労働基準監督署長は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、厚生労働省令で定めるところにより、事業者、労働者、機械等貸与者、建築物貸与者又はコンサルタントに対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。
労働安全衛生法 第120条
次の各号のいずれかに該当する者は、50万円以下の罰金に処する。
(第1号~第4号 略)
5 第100条第1項又は第3項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者
(第6号 略)
労働安全衛生規則
第 97条(労働者死傷病報告)
事業者は、労働者が労働災害その他就業中又は事業場内若しくはその附属建設物内における負傷、窒息又は急性中毒により死亡し、又は休業したときは、遅滞なく、様式第23号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければ
ならない。
※遅滞なく・・・概ね1週間から2週間程度と解釈されている。
労災隠しの送検事例(厚生労働省資料より抜粋)
【事例1】
労働災害が発覚するまで「労働者死傷病報告」を提出しなかったとして○○労働基準監督署は労 働安全衛生法違反の疑いで、2次下請である塗装業Bの代表○○と3次下請の塗装業Cの代表○○を○○地方検察庁に書類送検した。
マンション新築現場で、Cの作業員が吹き付け塗装をするためのシート張りをする際、転倒し右 手首を複雑骨折したが、BとCは共謀して、「受注を確保するために元請けに労災保険で迷惑を
かけたくない。」として労働災害を隠蔽したもの。
【事例2】
○○労働基準監督署は、虚偽の「労働者死傷病報告」で労災かくしを行ったとして、労働安全衛 生法違反の疑いで建設会社Eと同社の専務取締役を○○地方検察庁に書類送検した。
同社は元請建設会社から2次下請けしたビル建設工事を行っていたが、同社労働者が同建設現場 で熱湯を浴び全治3週間のやけどを負った労働災害が発生した際、「自社の資材置き場で起きた。」 と同労基署に虚偽の報告をした疑い。
工事現場での労働災害は、元請建設会社の労災保険で補償されることになっているが、同社専務 は「元請けの労災保険を使うと迷惑がかかり、仕事がもらえなくなると思った。」と供述。
【事例3】
○○労働基準監督署は、マンションの改装工事中に労働者が骨折した労働災害があったにもかか わらず、別の工事で労働災害があったとする虚偽の「労働者死傷病報告」を提出したとして、労 働安全衛生法違反の疑いで、電気工事会社Fの社長を○○地方検察庁に書類送検した。
社長は、他県で行っていたマンション改装工事で、同社労働者がはしごから墜落し、あごなどを 骨折した労働災害があったにもかかわらず、同工事現場の所轄労基署に「労働者死傷病報告」を 提出せず、自社で請け負った別の工事現場で労災事故があったように装い、別の労基署に「労働 者死傷病報告」を提出した疑い。
元請けに迷惑がかからないよう、労働者の治療費を自社で負担しようとしていたが、負担が大き く、別の工事で労働災害に仕立てたもの。
元請けの担当者2名と1次下請けの建設会社社長も黙認していたとして、同法違反の共犯で書類 送検した。
次回から具体的に話題をすすめていくことにします。