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業務の館 
  労働基準・労務関係の部屋


従業員の退職にまつわるお話について


 今回は、従業員が会社を退職したいと申し出た場合、その従業員が特に雇用期間の定めのない雇用契約であった時には、労働基準法ではなく民法の規定が適用されます。しかも令和2年4月の民法改正法施行により、次のようになっています。

 民法627条

 1.当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

 2.期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。

 3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。

 さて上記の下線部の部分が今回の改正で追加となりました。改正前は特に限定されていなかったため、例えば毎月給与支払日に給与を支払うというような場合、労働者が末日に退職したい時は、その月の15日までに申し出る必要があり、15日以後に申し出た場合は、翌月末日退職となりますが、改正後は、労働者からの退職の申出は、申し出た日から2週間経過したら退職となります。


 なお使用者からの解約の申し入れの場合は、以下のような制限がありますのでご留意ください。

 解雇する場合は労働基準法第20条による解雇制限(30日前の予告)。

 労働基準法第19条による解雇制限
 業務上の負傷等による療養期間、産前6週間産後8週間、療養期間終了後または産前産後休業後30日間。


 退職届と退職願というキーワードで話を進めてまいります なお本記事は、雇用期間の定めのない雇用契約の場合の従業員のケースとします


1,退職届

 退職届は、従業員から退職したいという一方的な届出なので、退職届にて従業員が希望する日付で退職を認めて受理するだけです。もしそれを会社が何らかの理由で拒絶したり、認めなかったりしても、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす(民法97条)ことになっているので、要は2週間経過した日にて退職が成立してしまいます。

 退職届の留意点としては、退職にあたって判断する決定権限を持つ者に退職届が届いたことをもって受理とすることです。受理したら事後会社も従業員も撤回はできなくなります。中間管理職等が退職届を受け取った場合、その者が退職にあたって判断する決定権限を持つ者でない場合は、早急に退職にあたって判断する決定権限を持つ者に引き継ぐことが重要です。


2,退職願

 退職願は、従業員が退職することのお願いであり、このお願いに対して会社は承認し、双方が合意すれば退職が成立する合意退職です。したがって双方が合意すれば、即日でも1箇月後でも、2週間にこだわることなく、退職日を決めることはできます。また会社が合意の条件を提案することも可能とされています。

 退職願の留意点としては、必ずお願いに対する承諾したという趣旨の内容を回答する必要があり、それは書面で出した方が好ましいです。

 なお合意に反する、または合意にならなかった場合は、それは辞職の意思表示とされるため、退職願での退職希望日から2週間後にて、退職となり雇用契約は終了してしまいます。


3,その他

 就業規則に、「従業員は、退職を希望する日の30日前以上前に、会社に退職願を提出し退職を申し出て、会社の承諾を得なければならない」というように定めているケースは多いかと思われます。この場合であっても、会社が従業員の退職願に対して2週間以内に承諾されなかった場合、退職届が提出された場合は、2週間後に雇用契約は終了となってしまいます。強調してしまいますと民法原則に負けてしまいますので、あくまで退職手続きや引継の都合上、従業員に協力してくださいというのお願いベースというスタンスの規則なら、少しは規則の意味があるとされているようです。

 退職届なのか退職願なのかについては、最終的にはタイトルだけでなく、それらの内容から実務上判断されるようです。


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