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  労働基準・労務関係の部屋


従業員が裁判員に選任された場合の事業主の対応について2



 
さて従業員が裁判員に選任された場合、人事・労務の方ではどのような対応をしたらよいのかを、前回に引き続き取りまとめてみましたので、ご参考いただければと思います。

1,従業員が裁判員になったことの情報の取扱いについて

 従業員は、インターネット等で裁判員になった事を不特定多数の者が知り得る状況にすることは法律で禁止されていますが、上司に裁判員等になったことを話して,休暇を申請したり,同僚の理解を求めることは問題ありません。その際に,裁判所からの選任手続期日のお知らせ(呼出状)を上司や同僚に見せることについても差し支えありません。このことから事業主がそれらの情報を聞いて取り扱うことは、その目的の範囲で利用することは問題ないと思われます。

 また就業規則などで
 ・裁判員候補者名簿記載通知を受けたこと
 ・裁判員候補者として呼出しを受けたこと
 ・裁判員や補充裁判員に選任されたこと
 ・従業員が裁判員候補者名簿記載通知を受け取った場合に,辞退の申立てをするかどうか等について使用者と協議しなければならないについて,使用者に対する報告や協議を義務付けたりすることは可能です。なお辞退することを強要することはできないものと思われます。

 なお従業員自身が自発的に辞退することもできますが、そのうち仕事が忙しいという理由だけでは辞退できないことになっていますが、とても重要な仕事があり,ご自身が処理しなければ,事業に著しい損害が生じる場合や,裁判員になることにより自分自身やまわりの人に経済上の重大な不利益が生じる場合には,事件を担当する裁判所が判断し辞退が認められることになっています。その際には下記の判断基準により総合的に判断されます。
 ・裁判員として職務に従事する期間
 ・事業所の規模
 ・担当職務についての代替性
 ・予定される仕事の日時を変更できる可能性
 ・裁判員として参加することによる事業への影響


2,裁判員として裁判所に行くため休んだ場合の給料等の扱いについて

 裁判員として裁判所へ行くために休んだ場合、有給休暇にするか無給にするかは事業主の判断に委ねられています。

 ここで有給休暇とした場合に生じる問題としては、有給休暇は所定労働時間出勤したとして給与が支払われます。一方裁判員として裁判所で活動した場合には日当が支払われます。そこで従業員は給与と日当の二重受け取りにならないかということです。

 日当は,裁判員としての職務等を遂行することによる損失(例えば,保育料,その他裁判所に行くために要した諸雑費等)を一定の限度内で弁償・補償するものです。したがって,日当は,裁判員等としての勤務の対価(報酬)ではありませんので,日当と給与の両方を受け取ることは二重取りにはならないので、何ら問題はありません。


3,従業員が裁判員として従事した証明書について

 裁判員候補者として裁判員等選任手続の期日に出頭したり,裁判員として職務に従事したことについて,申出があれば,本人に対し,証明書を発行します。裁判員候補者の方には,呼出状の一部に設ける出頭証明書欄に証明スタンプを押印します。また,裁判員として職務に従事した方については,別途証明書を発行します。

 上記のように従業員が裁判所に申し出れば、裁判員として職務に従事した事の証明書が発行されるので、有給休暇を付与したときなどに事後に裁判員として従事した旨の証明書の写しの提出を求めることは可能かと思われます。


4,裁判員として従事中の負傷について

 裁判員や裁判員候補者が裁判所に向かう途中に事故にあった場合,裁判員は,非常勤の裁判所職員であり,常勤の裁判所職員と同様に,国家公務員災害補償法の規定の適用を受けます。したがって,裁判員が,その職務を果たすため裁判所と自宅の間を行き帰りする途中で事故にあった場合,同法の規定に基づき,補償を受けることができます。また,裁判員候補者についても,裁判員と同様に補償を受けることができます。また裁判員として従事している間の負傷等についても、業務災害として国家公務員災害補償法の規定により補償は受けられます(自己負担なし)。

【本記事作成にあたって参考した資料など】
 法務省HP・従業員の方が裁判員等に選ばれた場合のQ&A
 最高裁判所HP・裁判員制度Q&A


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