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年次有給休暇ちょっといい話


 さて年次有給休暇を消化しきれなかった場合に翌年に限り繰り越しすることができることになっております(昭和22年12月15日 基発第501号)。 そうなりますと繰り越した分と新たに付与された年次有給休暇が発生することになり、この時に年次有給休暇を労働者が使いたいと申し出た場合にいったい繰り越した分を使ったのか、それとも新規に付与された分を使ったのかはっきり分からない場合があります。

 ここで話を展開させるために例示をしていくことにします。例えば8日の繰り越しすることができる労働者が、翌年になって12日新たに付与されたことにしましょう。そしてこの時2日の年次有給休暇を事業主に取得申し出をしました。そこで仮に繰り越し分から使っていきますと繰り越し分6日、今年分12日となり、また今年分から使っていくと繰り越し分8日、今年分10日となります。その結果このままで次の翌年の時に繰り越すことのできる年次有給休暇は前者の場合は12日、後者の場合は10日となり労働者の年次有給休暇取得に大きな影響を与えることになるのです。

 ここで労働基準法はいずれからの分が先に請求できるか、また与えることができるか特別の定めがないのです。そして労働契約、労働協約、就業規則に例えば前年の分から取得することができるなど特別の定めがしていればそれに従うことになります。


 しかし何の定めもなくどうしようもない場合はどのように解釈するか問題になります。労働基準法にはこの点何の定めがないので、ここは民法の債務の充当の条文(第488条・第489条第2項)を適用して解釈することになります。

 ここでは労働者(債権者)に対して事業主(債務者)は年次有給休暇を与える債務を負担していることになります。上記の例に当てはめると合算して20日の年次有給休暇の債務があって、2日の年次有給休暇を付与した場合には当然20日のうち2日間という債務しか果たすことができません。ではこの場合いずれの債務・・・繰り越し分から割り当てたのか、今年分から割り当てたのか解釈に困ることになります。この先の解釈は

 まずは・・・
 1,事業主が繰り越し分・今年分をいずれかを指定して付与する。
 2,事業主が1の指定をしない場合は、労働者がいずれかの選択することができる。

となるのです。2の場合で事業主が直ちに異議を述べたときは、事業主に有利な方・・・ここでは次の年度も使える今年分の年次有給休暇よりも今年で消滅する繰り越し分を割り当てることができるのです。 では事業主・労働者が共にいずれの分を割り当てるのか指定しなかったときも前記と同じように、今年度分を使用したとされます。

 つまり事業主は沈黙しておいても、労働者がいずれかを指定しない限り年次有給休暇は今年度から充当できるのです。労働者が指定したのが気に入らない場合は、直ちに異議を述べればよいわけです。


 できれば就業規則などで労働者が年次有給休暇を請求した場合は、いずれかから充当するのかを規定していれば悩むことはないのですが、現実問題としてここまで定めている就業規則はあまりないのです。労働法規の解釈からすれば労働者に有利になるようにしなければならないと思いがちですが、あるところで就業規則に「年次有給休暇は今年分から充当する」と定めていても現状では判例・行政解釈上違法という解釈がなされてないので、このような就業規則も実は有効で現場の監督署で確認(労使トラブルの際に・・・)しても否認されませんでした。


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