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  高松風土記


高松風土記18 小作争議と伏石事件2


 さて今回は、本題となる伏石事件(現在の高松市伏石町)の経過だが、この事件の伏線は大正11年6月に小作農約150名が、それぞれの地主に小作料の永久2,3割減額請求を行ったことから始まった。地主はこれを拒否したので、小作側は麦の不耕作同盟結び一部小作料の納付をしなかった。翌大正12年も引き続き争い、大正13年には、地主も伏石松縄地主協同会(約80名)を結成してそれぞれの小作人に小作料請求訴訟や各種差押を行って対抗するようになってきだした。


 そして大正13年10月中旬頃に、稲の刈り取りには1週間早かったものの地主の仮差押を予防するために刈り取ってしまった。これに対して地主は、11月初旬に2回にわたって晩稲にねらいをつけて立毛仮差押(刈り取っていない稲そのものの仮差押)を強行した。

 これら差押られた稲の競売が11月27日・28日に太田村役場で行われ、小作側は、地主を競売場に入らせないために日本農業組合支部員を動員して示威活動をしてみたが、地主側代理人は執達吏とともに警察官に見守れながら入場してしまっていた。また資金も相当準備していたが、競売単価が損得なしにせり上がってしまったので、それほど競り落とすことはできなかった。

 そして小作人側は、落札した立毛稲を2,3日のうちに刈り取って田を明け渡すように要求したところ、地主側は刈り取りはこちらで行うので1週間待ってほしいと回答した。小作人側としては刈り取りが遅れると麦まきの時機を逸する理由があった。ここで日本農業組合の顧問弁護士が、小作人が地主の落札した立毛稲を刈り取ってから麦まきをする。刈り取った立毛稲の費用は有益費として地主に請求して、地主が拒めば引き渡しを拒むとよいとアドバイスを行った。実際この通りに小作人は実行し、さらに保管の必要上稲の脱穀まで行ったのである。


 しかしこれら本来民事事件の小作争議が刑事事件になってしまい、当初は地主への暴行で検挙したのだが、痕跡がなかったので今度は先の行為を窃盗罪及び窃盗教唆を理由とした。検挙されたものは100日ほど拘留されたまま過酷な取り調べを受け、後に自殺者まで出てしまった。事件に取り組んだ日本弁護士協会は、これら人権蹂躙の実態を調査して、司法省当局に関係者の処分要求するとともに、弁護士協会の機関誌で高松人権蹂躙事件号の特集をしてキャンペーンを行ったほどである。

 結局この第1審は高松地方裁判所で約2ヶ月間審理され、大正14年9月に判決が下された。1人は証拠不十分で無罪、4人が窃盗教唆罪、18人が窃盗罪となり、懲役10ヶ月から4ヶ月、3人(弁護士 日農支部幹部)を除き執行猶予がついた。

 冒頭の小作料減額要求の方は、県や村当局の調整によって大正14年3月に調停が成立して、大正12年から1割から1.5割の減額改定となった。


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